人間もそうですが、猫も産まれたときは母親のお乳を飲んで育ちます。
ですので、牛乳は子供の発育にも良いと一般的には考えられていますし、猫にとっても牛乳は健康に良いものののような気がしますよね。
「お腹をすかせた子猫を見たら真っ先に牛乳をあげる」という行為もほぼ常識となっており、また、猫も牛乳を好んでよく飲みます。
ところが、牛乳を猫に与えるにはデメリット面もあるといいます。
なぜ、体に良さそうな牛乳が猫の健康にとって良くないのか。
今回は、猫に牛乳を与える注意点や正しいミルクの与え方を解説していきます。
もくじ
猫は牛乳を飲んではダメなのか?
一般に体に良いものとされている牛乳。
また、概ね猫が好んで口にする食べ物としても知られています。
猫が牛乳を飲むのは果たしてダメなのか?
まず、牛乳を摂取することのメリットとデメリットから見てみましょう。
猫が牛乳を飲むメリット
一般的に考えられているように、もちろんメリットもあります。
栄養価が高い
牛乳は牛の子供を育てるためにある完全栄養食品です。
したがって、牛乳にはタンパク質や脂肪、ビタミン類、カルシウムが豊富に含まれており、猫にとってもこれらは必要栄養素であるため、健康維持の一助になるという側面もあります。
猫に食欲がなくすぐに栄養を摂らなくてはいけない時に、手っ取り早く対処できる方法として重宝することもあるでしょう。
水分補給ができる
牛乳は液体なので、「水分」も同時に摂取できるということにもなります。
猫にとって水分摂取は健康維持や長生きするために非常に大切なのですが、肝心の猫がさまざまな理由で水をあまり飲みたがらないことがあります。
これは、猫の生態上「水の摂取量が少なくても生きていける体になった」ということなのですが、だからと言って水分摂取をないがしろにすると、病気のリスクが格段に上がってしまいます。
猫が何かしらの事情で水を飲まない時、猫が口にしやすい牛乳は手軽に水分不足を補うためのものとして非常に役立ってくれることがあります。
便秘解消が期待できることもある
牛乳を飲むことによって腸が刺激され、便秘の解消に役立つこともあります。
牛乳は水分や油分を含み、固くなった便を柔らかくする効果があるので、便秘になった猫に少量の牛乳を与えると改善されたという例も多くあります。
ただし、後述しますが、牛乳は逆に下痢を引き起こすリスクもありますので、便秘解消のために与える場合は、獣医さんに相談してからにすることをおすすめします。
猫が牛乳を飲んではいけない理由
次に、猫が牛乳を飲んではいけない理由を挙げていきます。
一般に猫がよく好み、栄養のある牛乳ですが、意外にもメリットよりもデメリットの方が多いのです。
下痢になりやすい
牛乳は栄養価の高い食品であることは先にも述べましたが、牛乳には炭水化物の一種である「乳糖(ラクトース)」が多く含まれています。
猫と牛の子供を育てるための必要栄養素は異なりますので、当然ですが、猫を育てるための乳と牛を育てるための乳の栄養の構成要素は全く異なります。
肉食動物である猫の乳にはタンパク質や脂肪が多く含まれているのに対し、草食動物である牛の乳には「乳糖」が最も多く含まれているのです。
牛でしたら体内に「ラクターゼ」という酵素を持っているので、分解して乳糖をエネルギーに変えることができますが、猫は肉食動物でラクターゼを体内に持っていないので、乳糖を分解することができず、消化不良を起こして下痢になってしまいます。
乳糖(ラクトース)に対する耐性がなく、摂取すると下痢、腹痛などの諸症状を引き起こす症状のこと。
消化器での乳糖の消化酵素(ラクターゼ)の分泌不足が原因とされる。
猫の多くはこの「乳糖不耐症」の体質の個体が多い。
ただ、人間でも牛乳を飲むとお腹がゆるくなる人と全く平気な人がいるように、猫にも「乳糖」を分解する能力には個体差があります。
猫の乳にも乳糖は少なからず含まれており、すべての猫が全く受け付けないというわけではありませんが、与えるのであれば個々の猫の特性を見極め、慎重に与える必要があるでしょう。
特に、子猫やシニア猫は体力がなく下痢が悪化すると危険な状態になることがありますので、より注意する必要があります。
乳製品アレルギーの可能性
猫によっては、乳製品に対してアレルギー反応が出る子がいます。
初期症状では皮膚に疾患が表れる可能性が高く、フケが出たり、痒がったりする様子が見受けられます。
また、乳糖不耐症だけではなく、アレルギーでも下痢や嘔吐など消化器系の症状が出る場合があります。
肥満になりやすい
牛乳は脂質が多く含まれるため、与え過ぎは肥満のもとになります。
大人の猫であればキャットフードで十分な栄養が摂れるので、それに加えての牛乳は与える量を考えましょう。
食欲がないなど非常事態でもないのに、飲み水代わりに牛乳を与えると、脂質の過剰摂取になり猫はどんどん太ってしまいます。
心臓に負担がかかる
牛乳に含まれている「ナトリウムイオン」という成分は、猫が過剰に摂取すると、血液量が増加し血圧を上げてしまいます。
そのため心臓に負担がかかり、特に高齢猫や元々心臓病を患っている猫にとってはかなり危険なモノになります。高齢猫や心臓病の猫には、牛乳以外の食べ物でしっかり栄養を与えてあげましょう。
健康で若い猫でも、日常的に与え続けていると少しずつ過剰摂取となり健康を害する時がきますので、決して与え過ぎてはいけません。
腎臓にも負担がかかる
牛乳には、健康な猫に対して害のある成分が含まれているわけではありませんが、牛乳に含まれている「ナトリウム」や「リン」というミネラル成分は腎臓病の症状を進行させてしまう可能性があります。
なので、腎臓病を患っている猫には牛乳は非常に危険なものとなり、症状を悪化させてしまうことがあります。
もともと猫は腎臓の病気になりやすい動物で、高齢になると高確率でほとんどの猫が腎不全を患ってしまいます。
特に高齢猫は今が健康であっても牛乳が腎臓の病気の発症を早めてしまう可能性も高いため、高齢猫には牛乳は与えない方が賢明でしょう。
「シュウ酸カルシウム尿結石症」の危険性
牛乳をはじめとする乳製品には、「シュウ酸カルシウム」という成分が多く含まれています。
シュウ酸カルシウムを多く摂取すると、シュウ酸カルシウム結石をつくり、この結石は恐ろしいことに一度できてしまうと溶けることはありません。
そのため、そこから結石が大きくなりすぎた場合は手術をしなければならなくなってしまいます。
尿路結石症にかかると、おしっこが出ない等のトラブルになり、下手をすると命の危険に関わるので、重症化させないことが大切です。
猫でよく見られる尿路結石症は、アルカリ性の「ストラバイト結石」と酸性の「シュウ酸カルシウム結石」がある。
ストラバイト結石は食事療法で溶かすことができるのに対して、シュウ酸カルシウム結石は食事療法で溶かすことができない。
牛乳の正しい飲ませ方と注意点
それでも子猫や食欲のない猫に牛乳を与える場合は、次のことに注意しながら正しく与えましょう。
大前提として人間用の牛乳は与えない!
これは基本中の基本です。
「人間用」というのもおかしいですが、普通にスーパーで売っている私たち人間が飲むために売られているものは、乳糖の調整がされていない普通の牛の乳になりますので、猫に与えると前述のとおりお腹を壊してしまいます。
水で薄めればいいだろうと考える人もいますが、同じことです。
水で薄めたとしてもラクトースが消えるわけではありませんので、与えてはいけません。
ですが、人間用の牛乳の中でも、乳糖不耐症の人のために乳糖をすでに分解し調整していある商品があります。
こういった商品であれば、猫にも飲ませてもOKですよ^^
猫用の牛乳を与える
猫には猫用に最適化された牛乳を与えるのがいいでしょう。
人間用の牛乳と違い、猫用ミルクであれば、乳糖がカットされており、さらに猫に必要な栄養が強化されているので安心して与えることができます。
猫用ミルクの種類は、大きく分けて「粉末状タイプ」と「液状タイプ」の種類があります。
粉末タイプは、作る手間はかかりますが長期保存しておくことが可能。
さらに、必要な分だけを作ることができることがメリットです。
粉末タイプを与える場合は、お湯で溶かしてぬるくなるまで冷ましてから与えましょう。
液体タイプは、人間が飲む牛乳と同じく手軽にそのまま与えることができます。
ただし、液体タイプは開封してしまうと保存ができませんので、なるべく早く消費し、残ってしまった場合は潔く処分してください。
乳糖の少ない乳製品を選ぶ
また、ヤギミルク、ヨーグルト、カッテージチーズといったような乳糖の少ない乳製品で代用するのもおすすめです。
特に、ヤギミルクは乳糖の含有量が牛乳よりも少なく牛乳と比べて栄養も豊富。
簡単な栄養補給としてミルクを与えることを考えているなら、牛乳よりもヤギミルクの方が効果は高いでしょう
また、ヨーグルトも乳糖不耐症の人に適した食物とされていますが、猫にとっても好ましい食べ物です。
ヨーグルトは乳酸菌の発酵によって乳糖の20〜40%が分解されているので、お腹を壊すことはほぼなくなります。
「猫がヨーグルトを食べるの?」と驚く人もいますが、わりと好んで食する猫ちゃんも多いですよ^^
正しい飲ませ方と注意点
まずは少量から与える
初めて猫に牛乳を与える時、あるいは、久しぶりに牛乳を与える時は、いきなり茶碗いっぱいの牛乳を与えるのでなく、スプーン1杯ほどの少量から与えて、様子をみましょう。
下痢をするなど様子がおかしいようなら、すぐに使用を中止し、獣医さんの指示を仰いでください。
牛乳の温度に気をつける
いくら猫用ミルクであっても、冷えた牛乳は下痢の原因になる可能性が高いので、常温で与えましょう。
冷蔵庫に入れていた場合などは、一度レンジなどで温めてから、人肌くらいまで冷ましてください。ミルクは温め過ぎても良くありません。
少し冷ましすぎたかな、と感じるぐらいがちょうど良いくらいです。
カロリーには気を付ける
猫用とは言ってもやはり脂肪分が高いため、肥満にも繋がりやすいです。
与え過ぎには注意しましょう。
あえて低脂肪や無脂肪の牛乳、あるいは脂肪分の少ないスキムミルクを与えるのも良いでしょう。
牛乳だけで栄養を摂ろうと考えない
栄養価が高いからといって、牛乳に頼り過ぎるのもいけません。
基本的には普段食べているキャットフードで栄養をしっかり摂り、その補助やキャットフードを食べないときの対処法として考えるようにしましょう。
水のかわりに常に牛乳を与えるのもNG
基本の水分補給を牛乳にしてしまうと、普通の水に戻せなくなる可能性があります。
そうなってしまうと、万が一被災した場合などに牛乳を与えられない状況で、水を与えようにも飲んでくれなったり、高齢になり心臓や腎臓の負担を考えて牛乳をやめたときにやはり水を飲んでくれなかったりと、非常に困る状況になる可能性もあります。
そういう意味でも牛乳に頼り過ぎは良くないですね。
まとめ
牛乳は一般的に思われているように栄養が高いのは確かですが、摂取し過ぎると猫の身体に悪影響を与える成分が色々と含まれていることがわかりましたね。
猫の健康のためにと思って与えていたら、かえって負担になっていた、という悲しい事態を生まないためにも、正しい知識を持って適切な量を与えましょう。
【編集:MOTTO CAT運営スタッフ】