猫とお家で一緒に暮らしていると、服やカーテンに爪が引っかかってしまったり、遊んでるときに偶発的に皮膚に刺さって痛い思いをしたり・・・。
そんな経験、一度はあるのではないでしょうか。
『こりゃ爪切りしないと・・・』と思い立つのは自然な流れですよね。
しかし、いざ爪を切ろうとしても、こんな悩みや疑問が二の足を踏ませているのではないでしょうか?
- 怖くて切れない(どこまで切って良いのかわからない)
- 猫が暴れてしまって上手く切れない
- 嫌がってしまってかわいそうになってきた
- 自分で爪とぎしているし、そもそも猫に爪切りは必要なの?
この記事では、上手く猫の爪切りができる方法やコツについて、元動物看護師・トリマーの視点や経験からお伝えしたいと思います。
もくじ
猫の爪切りの必要性と頻度について
そもそも猫にとって爪は木に登るときや、獲物を捕らえるときに使う大切なもの。なのに猫に爪切りは必要なのか?と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、結論から言うと猫の爪切りは必要です。
なぜ必要なのかその理由と、爪切りの適切な頻度について見ていきましょう。
猫の爪切りはなぜ必要なの?
野生のネコ科の動物にとっては鋭い爪は生きるためになくてはならないものですが、飼い猫の多くは完全室内飼いであり、猫の飼い方としてもそうすることが適切です。
『人と生活を共にしている』ということを前提として、その上で必ず爪切りをする必要があります。
きちんと爪切りのケアをすることで予防できることは主にこの4つ。
- 人へのひっかき傷
- モノへのひっかかりや傷
- 巻き爪を予防
- 猫自身のケガ
猫と人が共に生活をする上で、猫に攻撃性や悪意がなくても、習性上の行動であったり、または、ひょんなことで驚いたりした瞬間に、猫の爪が人の皮膚や家具などのモノを傷つけ、ダメージを与える場面も多くあるでしょう。
人間にとってはこれは大変なストレスで由々しき問題ですが、猫の爪切りは決して飼い主の都合面だけで行うものではありません。
猫にとっても、爪切りをしないことでさまざまなリスクや危険が伴います。
例えば、爪とぎの回数が少なくなった老猫の爪が伸びすぎてしまったことで引き起こされる『巻き爪』。
巻き爪になると、肉球を自身の爪が傷つけ、非常に猫が辛い思いをします。
また、アクティブに動く猫であっても、爪が伸びた状態で動き回ることで、引っ掛かり事故を起こしやすく、爪を折ったり肉球を傷つけるなどの事態になりやすいのです。
猫の爪切りは、猫と人間が一緒に暮らす上で、お互いのストレスや危険を軽減するために必須で、非常に需要なケアの一つといえるでしょう。
爪切りの適切な頻度は?
爪切りの頻度は様子を見ながら約2週間に1度は切るようにしましょう。
後ろ足よりも前足の方が鋭くなってくるのが早いので、前足をよく見て、鋭くなってきたら切るようにしてください。
爪とぎの頻度や、前回切った爪の長さによって、尖ってくるまでの期間が変わります。
ですので、スキンシップついでによく爪の状態も見ておきましょう^^
【重要】猫の爪切りを成功させるコツ
さて、いざ爪切り!と意気込んで爪切りを握りしめ、猫に近づくと…。
爪切りを見ただけで逃げて行ってしまった、抱っこして抑えてみても嫌がって暴れて失敗した…という方も多いのではないでしょうか。
実は、猫の爪切りを成功させるにはそれ相応の手順があります。
いきなり爪を切ろうとするのではなくて、猫にとっても人にとっても負担のないようにするには、正しい知識や事前準備が欠かせません。
ここでは爪切りを成功させるコツとして、次のポイントを押さえておきましょう。
- 猫の爪の構造を知っておく
- 猫の爪や手足に触れることに慣れさせる
爪切り前に知っておくこと
爪切りの前に、まずは猫の爪周りがどういう構造になっているのかを知っておきましょう。
1. 猫の手足の構造を知ろう
猫は犬とは違い、自分で爪を出し入れすることができます。
普段はさや状の皮膚に、靭帯(骨同士をつなぐケーブル)によって隠されています。切るときにはその隠れている爪を出してやらなければなりません。
爪につながっている腱(筋肉と骨をつなぐケーブル)は、リラックスした状態の時はゆるみ、靭帯の張力(引っ張る力)で爪は引っ込んでいます。
ですが、筋肉の力で腱を引っ張り上げる(力を入れる)と、滑車の要領で爪とつながっている関節がちょうつがいのように開いて外に飛び出すようになっています。
爪の生え際の肉球を軽く押さえることで、関節が開き、爪が出て来ます。
デリケートな部分なので、なるべく弱く優しい力で押さえましょう。
2. 猫の爪の構造を知ろう
猫の爪は、前後合わせて18本あります。
- 後ろ足:4本×2 = 8本
- 前足 :5本×2 = 10本
外側に切っても大丈夫な白く硬い部分、そして内側には神経や血管が通っているピンク色のクイックと呼ばれる部分があります。
猫の爪の白い部分はミルクレープのように薄い爪の皮が重なる多層構造になっています。
爪とぎはこの外側の古い爪の層を剥がし、尖った新たな爪の層を露出させる役割があると言われています。
爪切りをした際にぽろっと薄皮のような爪がはがれることがありますが、古い爪の層がはがれただけなので問題ありません。
爪とぎをしない後ろ足は自然にぽろっと取れることもあれば、口で器用にはがしとることもあります。
切っても大丈夫なのは白く硬い外側の部分になり、先から2~3mmくらいの場所で切ります。
爪を光に透かすと薄いピンクのように見える内側の部分(クイック)は、誤って切ってしまうと、出血する上に猫に痛い思いをさせ、大きなトラウマを植え付けてしまう可能性が高いので絶対に切ってはいけない部分になります。
爪切りと手足を触れられることに慣れさせる方法
いきなりいざ爪を切ろうと思ってもうまくいきません。
なぜなら、猫自身は「爪切りって何?美味しいの?怖いの?何するの?」状態だからです。
猫によっては、飼い主がいざ切ろうと意気込む普段見せない行動に驚き、「何!?それ痛いの!?怖いよ!」とビビってしまう子も。
したがって、まず爪切りをする前にクリアしなくてはいけないことは「爪切りは怖くないよ!」ということを猫に教えてあげることです。
爪切りそのものに慣らし、手足に触られることに慣れさせることが大事!
そこで、爪を切る前にちょっとした訓練をしてみましょう。
これをするだけで、猫も人も少ないストレスで爪切りすることができるようになる確率がぐっと上がります。
1日たったの5分未満で大丈夫。ここは大事なポイントなのでしっかりと心得てくださいね!
これを毎日繰り返してください。
そのうちに爪切りを見ると大好きなおやつを貰えると思い、喜んで寄ってくるようになります。
こうなればもうしめたもの!です。
ただ、おやつの与えすぎには気を付けてくださいね。
あくまでも爪切りを手足に当てるだけです。
ここでは実際に切りません。ちょんっと当てるだけで良いんです!
これを数回繰り返してください。
褒美としてのおやつはたくさんあげなくても大丈夫です。
猫が喜べばそれでOK!
「よし!」「おりこうさん」など声かけも忘れずに^^
ここからちょっとだけ難しくなりますが、毎日根気よく繰り返してください。
ここで大事なことは無理矢理やらないことです。
この、”触られることに慣れさせる”作業は、日頃のスキンシップの一環としてチャレンジしてみてください^^
爪切りそのものや手足を直に触られることにも慣れてきたら、ここで初めて爪切りの段階に進めます。
爪切りの正しい方法と手順
抱っこする人、爪切りする人に分かれて、2人1組でするのが理想です。
そして猫が爪切りに慣れるまでは1日1本だけ爪を切ってください。
一気に全部切ろうと思うと猫も人も疲れてしまいます。
慣れてきたら1日2本にする、3本にする…など本数を増やしていくと良いでしょう。
爪を切る位置について
爪は先から2~3mm部分をスパッと1度だけ切ります。
早く終わらせてあげるほうが良いので、角はとらなくても構いません。
繰り返しになりますが、くれぐれも内側のクイック部分を切ってしまわないように慎重に位置を確認してくださいね。
爪切りの正しい手順
STEP 1正しく抱っこする
まずは猫の背中を自分の胸からお腹にくっつけるようにして膝の上で抱っこします。
ポイントは自分に猫をしっかりくっつけること。
猫が動いても押さえつけるのではなく、猫にあわせて動くなどして力を入れすぎないようにしてくださいね。
STEP 2後ろ足からカット
前足は敏感で嫌がりやすいので、最初に後ろ足から切っていきます。
後ろ足の爪も、内側よりも外側の方が抵抗が少ないので、嫌がりにくい外側の爪から切っていきましょう。
抱っこしている人は軽く首元を撫でるなどして猫の顔を爪切りに近づけないようにしてください。
爪切りは一応刃物なので、事故を防ぐためにも、そして嚙まれないようにするためにも気を付けましょう。
切る人は、足を握りすぎないよう、軽く握って爪を出して切るようにしてください。
STEP 3前足をカット
前足は嫌がりやすいので、なるべく手早く切り、一本切ったらすぐにおやつをあげて褒めてあげましょう。
抱っこする人は、猫の手の付け根を持つと固定されるので切りやすいかと思います。
内側の少し上にある狼爪(ろうそう)という人間でいう親指にあたる指の爪の切り忘れに注意してくださいね。
STEP 4褒める
切り終えたらたくさん褒めてあげましょう。
もちろんご褒美の大好物のおやつも忘れずに^^
そしてたくさん遊んであげるなどしてストレス発散させてあげてくださいね!
褒めることを忘れると爪切りのイメージが悪くなるので、次にすんなり切らせてもらうためにも必ず褒めましょう。
嫌がる&暴れる猫の爪切りのコツは?
どうしても嫌がったり、暴れたりする場合もあるかと思います。
その場合もいくつか対処法がありますので紹介します。
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目隠しをする
タオルなどで視界を遮ってあげることでおとなしくなることがあります。
猫は目の前を遮らえると、前に進めずバックしかできなくなる習性がありますが、後退することが不可能な状況下で
は、とたんに動くのをやめおとなしくなることがあります。
または、目の前を遮ることで隠れている気分になり、安心しておとなしくなるという説もあります。
息がしやすいように鼻と口元に穴が空いている覆面マスクのような猫の爪切り専用のグッズも。
ですが、この方法には個体差があり、おとなしくなる子もいれば、逆にパニックになる子もいるので注意が必要です。
寝ている間に切る
熟睡していて、少々のことでは起きない猫に有効です。
ですが途中で起きてしまい、爪切りしていることがバレてしまうと猫に不安を与えてしまい、猫も安心して眠れなくなってしまうので細心の注意を払いましょう。
スティック型おやつをあげながら切る
猫ならみんな大好きなちゅーるちゅーる♪…の、例のブツ。笑
与えるとたいていの猫は無我夢中に食べていますね。
この魅惑のおやつを使って、食べるのに夢中になっている隙に爪を切るという方法です。
これは2人1組で行うのが基本。
1人が抱っこしながらおやつをあげ、もう1人が爪を切るようにします。
ただこれも、はじめは一気にすべての爪は切らず数本ずつ行い、慣れてきているようであれば本数を増やしていってください。
ちゅーるでなくとも、愛猫が大好きなもの、かつ、少しずつ食べられるものなら効果的です。
食欲のある猫であれば、難なく切らしてくれるでしょう。
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ネットに入れる
目の粗い洗濯ネットに猫を入れ、隙間から爪を出して切る方法です。
ですが、猫がストレスを強く感じてしまうやり方なので、爪が割れかけていて危険な時など、どうしても切りたい時や緊急時の最終手段として考えてください。
ネットのような狭い場所に入れて拘束し、強いストレスを与えれば、信頼関係にもヒビが入るデメリットもありますので注意しましょう。
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ネットは普通の洗濯ネットでも利用可能ですが、このように専用のネットも販売されています。
猫の爪切りの選び方
爪切り自体が合わないと猫が爪切りを嫌がる原因になってしまうこともあるので、愛猫にあった爪切りを慎重に選びたいものです。
ですが、猫用の爪切りといえどたくさん種類があり、どんな爪切りを選べばいいかわからず悩んでしまいますよね。
猫用の爪切りの種類は、大きくわけて以下の5種類があります。
- ギロチンタイプ
- ピコックタイプ
- ハサミタイプ
- ニッパータイプ
- 電動やすりタイプ
ギロチンタイプ
爪切りの際に音が静かで猫が嫌がりづらいのが特徴です。
穴に爪を通してギロチンの要領でスパッと爪を切ります。
慣れれば使いやすいのですが、爪切り初心者には少し使いにくいかもしれません。
初心者向け度:★★★☆☆
メリット
- 切る時の音が静か
デメリット
- まず穴に爪を通す必要がありやや使いにくいことも
ピコックタイプ
ギロチンタイプと形は似ていますが、ギロチンのように穴に爪を通す必要がないので爪切り初心者にも扱いやすい爪切りです。
巻き爪にも適しており、1本でオールマイティに使えます。
ギロチンタイプより少し値段は高いものが多いです。
初心者向け度:★★★★☆
メリット
- 巻き爪に最も適している
- オールマイティで扱いやすい
デメリット
- 少し値段が高いものが多い
ハサミタイプ
子猫のように小さな爪や柔らかい爪に適しています。
ハサミと使い方が同じであること、どこまで切れるかが明確なので、爪切り初心者にも扱いやすい爪切りです。
ですが、力が均一に伝わりにくいので爪が割れやすくなるというデメリットも。
したがって、爪の柔らかい子猫向きですが、爪が固い洋猫や成猫・シニアの猫には爪が割れてしまう可能性があり、あまりおすすめできません。
あと、切ったときに「パチン」と音が鳴るので、音に敏感な猫にも向かないでしょう。
初心者向け度:★★★★★
メリット
- ハサミと使い方が同じで扱いやすい
- どこまで切れるかが明確
- 柔らかく小さい爪向き
デメリット
- 力が均等に伝わりにくい
- 固い爪には向かない
- パチンという音が出る
ニッパータイプ
ニッパーのように爪を挟んで切るタイプの爪切りです。
こちらもハサミタイプと同じく、どこまで切れるのかが明確にわかるので、安全でかつ切ったときの音も静かというメリットがあります。
特に、大型の猫種や体格の大きな猫、シニア猫、爪の固い洋猫には適しています。
ただ、爪切り自体のサイズが大きいものが多く、細く小さな爪にはあまり適していません。
特に子猫や小さな猫への使用は避けた方が良いでしょう。
巻き爪にも使えますが、扱いを誤ると肉球を傷つけてしまう恐れがあり、初心者はピコックタイプの方が扱いやすいです。
また、ギロチンタイプに比べ丈夫で壊れにくいのが特徴です。
初心者向け度:★★★★☆
メリット
- どこまで切れるか明確
- 安全性が高い
- 切った時の音が静か
- 巻き爪にも使える
- 丈夫で壊れにくい
デメリット
- 爪切りのサイズが大きいので子猫には適さない
電動やすりタイプ
『爪を切る』のではなく『爪を削っていく』タイプの爪切りです。
仕上がりがとっても綺麗なので、理想ではありますが…。
音と振動があるので、爪切りによっぽど慣れている子でないとおすすめできません。
少し時間もかかるので、飼い主さんの根気も必要です。
初心者向け度:★☆☆☆☆
メリット
- 爪を削るため非常に綺麗に仕上がる
デメリット
- 音と振動があり慣れた猫でないと難しい
- 処置に時間がかかる
◆◆◆
以上のことから、爪切りは次のように選ぶのがおすすめです。
- 巻き爪の場合 ⇒ピコックタイプ
- 音に敏感な場合 ⇒ギロチンタイプ・ニッパータイプ
- 子猫の場合 ⇒ハサミタイプ
- 人も猫もベテラン ⇒電動やすりタイプ
ただ、すべての爪切りの種類で言えることは「切れ味」が一番大事です。
切れ味が悪いと爪がささくれたように割れたり、切りづらいことで爪を切った時の振動が強かったりするので、猫がとても嫌がり、爪切りをするのも困難になってしまうことがあります。
切りすぎて血が出た時の対処法
細心の注意を払いながら爪切りをしていたとしても、切った瞬間に突然猫が動くなど想定外のことも多いのが、猫の爪切りという荒業。
誤ってスパッと血管部分まで切ってしまったり、爪から出血してしまった…ということが万一あるかもしれません。
そんな時は慌てず、まずは清潔なガーゼや脱脂綿などで患部を押さえて止血しましょう。
少しの出血であれば2~3分ほど押さえると止まります。
また、市販されているペット用の止血剤を使う方法があります。
止血剤は粉状の薬剤で、患部に少量付け押さえて血を止めるというものですが、これを利用すると指圧のみよりも短い時間で止血することができます。(約5〜10秒)
暴れて動きがちな猫を爪切りする場合は、常備しておくと安心ですね。
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それでも血が止まらない場合は動物病院へ行きましょう。
また、応急処置で血が止まった場合でも、時間を置いたあと再び出血していないかどうか、猫が気にして舐めたり歩きづらそうにしていないか様子を見て、少しでも様子がおかしいところがあれば動物病院で診てもらうのが得策です。
このことから、何かあった時はすぐに対応できるように動物病院が開いている時間に爪切りを行うようにした方がいいですね。
うまく切れない時は病院へ
と、お手上げの状態の時は諦めも肝心です。
あまり無理矢理やろうとすると愛猫との信頼関係にヒビが入ることも・・・
そうなってしまう前に、動物病院で切ってもらうようにしましょう。
病院だと失敗の可能性が極めて低く、万が一出血した時でもすぐに処置してくれるので安心ですし、数人で手早く終わらせてくれるので猫の負担も少なくて済みます。
動物病院でも「爪切りだけで来るなんて・・・」なんて思いませんので、遠慮なく行きましょう。
その時に爪切りのアドバイスも聞いておくと一石二鳥ですよ^^
まとめ
猫の爪切りについてお届けしましたがいかがでしたでしょうか。
爪切りといえど思ったよりも奥が深く、飼い主さんとの信頼関係にも関わってくることなので、慎重に、愛情を持って爪切りしてあげてくださいね。
無理させず、スキンシップの一部として楽しみながら挑戦してみてください^^
猫ちゃんとより良い生活が送れますように…♪