人間にとって生きるために欠かせない水ですが、猫にとっても餌と同じくらい”新鮮”な水が必要です。
ですが、猫に飲ませる水の「種類」についてはあまり言及されておらず、どんな水がいいのか迷っていませんか?
猫は自分で飲み水を選べないので、飼い主が猫に与える水を選ばなければいけません。
この記事では、猫の飲み水にとして適している水を、水道水、浄水器の水、ペットボトルのミネラルウォーターからそれぞれ比較していきますので、参考にしてみてください。
もくじ
猫の飲み水(水道水・浄水器・ペットボトル)比較考察!
猫の飲み水は水道水でOKなのか?
日本では約7割の人が、水道水そのままではなく、ミネラルウォーターや浄化された水を飲んでいます。
だからこそ、愛猫の飲み水として水道水を使うことに抵抗を持ったり、そもそも水道水の猫の健康にとって安全なものなのか?と疑問を感じている人もいることでしょう。
まず、猫の飲み水として水道水でOKかどうか、その安全性や影響について解説します。
基本的には水道水で大丈夫!
結論から言うと、水道水は基本的に猫が飲み水として飲んでも問題はないといえます。
その理由として『安全性』と『硬度』との2つの観点からみていきましょう。
日本の水道水は『生涯飲み続けても人体の健康に全く悪影響がないこと』という考えのもと、世界保健機構(WHO)の基準と日本独自の水道法や厚生労働省の基準が設けられており、厳しく管理されています。
日本の水道水は安全性において、世界最高の水準を誇っているのです。
日常的に水道水を使っている私たち日本人からすると『人間が飲めるという水質の高さは当たり前』と感じてしまうかもしれませんが、厳しい基準をクリアした水しか家庭には供給されていません。
水道水を衛生的に保つために、塩素を使って病原菌などが除去されていますが、その塩素の使用量も残留濃度や最大目標値を定めて、健康や風味に影響が出ないように管理されています。
また、塩素を使った消毒処理する際に発生する発がん性物質の『トリハロメタン』が水道水に含まれる点について、『本当に安全なの・・・?』と心配する声も聞かれますが、これに関しても基準値が設けられているため、安全性は保たれているといえるでしょう。
たしかに、これらは決して『体に良い』ものではありませんが、ニオイや味への影響はともかくとして、健康を害する成分は真っ先に取り除かれているので、健康被害に対する影響はきわめて少ないものと思われます。
むしろ、塩素消毒することで雑菌が繁殖しにくく、腐りにくいという点が水道水のメリットです。
猫は人間のように蛇口から水が出せないので、器に入れた状態で1日1回の頻度で取り換えるにしても常温で24時間近く置かれた水を飲んでいることに。
飲み水を頻繁に取り換えられない場合には、逆に“消毒されている”という水道水のメリットが生かされるでしょう。
ねお
水の硬度は世界保健機構(WHO)の基準によって、以下のように分類されています。
軟水 :硬度0~60mg/L
中軟水 :硬度60~120mg/L
硬水 :硬度120~180mg/L
超硬水 :硬度180mg/L以上
引用)WHO Hardness in Drinking-water
水道水に用いられる日本の水は硬度が低く、カルシウムやマグネシウムといったミネラル類のの含有量が少ない、いわゆる“軟水”となります。
猫はカルシウムやマグネシウムなどのミネラルを多量に摂取すると、尿路結石症などの病気に掛かりやすくなるため、与える餌や水などのミネラルの量に気を付けなければいけません。
普段のフードからでも十分なミネラルを摂取できている現代の猫が、ミネラルたっぷりの硬水を飲み続けてしまうと、高確率で尿路疾患にかかってしまうでしょう。
ですが、日本の水道水の硬度は、広範囲の地域で1Lあたり40~70mg/Lと軟水から中軟水に分類され、猫の健康を害するほどのミネラルは含まれていないため、飲み水として与えても大丈夫です。
水道水を避けた方が良い場合もある
基本的には水道水の安全性や硬度に問題はありませんが、まったく『危険性がない』ということではありません。
もし、あなたの水道事情が以下に該当する場合は、水道水の利用を避けた方が良いでしょう。
- 配水管が老朽化している
- 井戸水が生活用水として用いられている
- マンションなどの集合住宅で給水タンク使用の場合
- 水の硬度の高い地域に住んでいる
老朽化した水道管を通った水は、たとえ水道水自体が安全基準を満たした清潔なものであっても、汚染成分が溶け出して飲み水には適さないことがあります。
水道管の耐用年数を超えて老朽化が進んでいる場合、水道水に鉛や赤サビから出る水アカや細菌などの不純物が混入している可能性が高く、それを飲み続けるのは猫の身体に良くありません。
水道管の老朽化が疑わしい古い建物に住んでいる場合は、水道水はやめておきましょう。
早ければ20年ほどで老朽化が進んでしまう場合もあります。
地域によっては井戸水を生活用水に用いている場合もありますが、井戸水はカルシウムやマグネシウムなどを含んでおり、猫の飲み水には適しません。
マンションなどの集合住宅で給水タンクを使用している場合には、蓋の閉め忘れ等による異物混入の危険性もあり、水道の蛇口から出てくる水であっても、猫に与える前に人間が注意をしなければいけない点があるのも事実です。
日本の水は大部分は硬度120ml/L未満の軟水ですが、その中でも地域によって水道水の硬度は大きく異なります。
これは、場所によって大地の地殻物質が異なるからですが、75〜100ml/Lという硬度がやや高い、硬水よりの中軟水である地域もあります。
もしあなたが硬度の高めな地域に住んでいる場合は、水道水をそのまま猫に与えるのは避けたほうが良いでしょう。
参考 全国水質マップクリタック株式会社ペットボトルやミネラルウォーター使用は?
ペットボトルで販売されているミネラルウォーターを猫に飲み水にするならば、飼い主さんが成分をしっかりと把握しておかなければいけません。
硬水のミネラルウォーターは、ミネラル成分を多く含んでいるので猫の飲み水には不向きです。
確認せずに与えてしまうと、健康を損ねる可能性があります。
市販されているメジャーなミネラルウォーターの硬度は以下のとおり。
商品名 | 硬度 | |
---|---|---|
南アルプスの天然水 (サントリー) | 30mg/L | 軟水 |
おいしい水 天然水 六甲 (アサヒ飲料) | 約40mg/L | |
い・ろ・は・す天然水 (コカ・コーラ) | 27.7~40.6mg/L | |
ボルヴィック (キリンビバレッジ) | 60mg/L | 中軟水 |
クリスタルガイザー (大塚食品) | 67mg/L | |
エビアン (伊藤園) | 304mg/L | 超硬水 |
コントレックス (ポッカサッポロ) | 1468mg/L | |
※いろはす天然水の硬度は採水地により異なる |
コントレックスやエビアンは硬度が桁違いに高い超硬水であり、クリスタルガイザーは中軟水にあたりますので、これらは猫に与えないようにしましょう。
ミネラルウォーターは地下水を原水としていますが、傾向として日本のミネラルウォーターは軟水が多く、海外のものは硬水が多くなっています。
日頃よく目にするミネラルウォーターでもこれだけ硬度に違いがあるので、ラベルに記載されている硬度を必ず確認して軟水と表記されているものを選びましょう。
また、ミネラルウォーターは加熱などで殺菌されていますが、水道水のように塩素で消毒はされていません。
そのため、置き水に使うと雑菌が繁殖しやすくなるのでこまめな交換が必須です。
餌をあげる度に水を変えるなどの管理がしっかりとできるならば、軟水のミネラルウォーターを使用するのはOKです。
ですが、人間用の軟水ミネラルウォーターを使用するのであれば、ペット用に販売されているミネラルウォーターを使用する方が得策です。
ペットウォーターであれば、猫の健康を第一に考えて尿路結石の原因となるミネラルを徹底的に除去してありますので、猫の飲み水として最も安心できるものといえるでしょう。
- タンパク質 0g
- 脂質 0g
- 粗繊維 1%以下
- 粗灰分 1%以下
- ナトリウム 0.83mg
- マグネシウム 0.19mg
- カルシウム 0.46mg
- カリウム 0.12mg
0kcal/100g
こちらジェックス社の『アクティア』は、硬度19mg/Lの超軟水ですので、ミネラル分が気になるならば安心してできるでしょう。
- タンパク質 0g
- 脂質 0g
- 炭水化物 0g
- ナトリウム 0g
- マグネシウム 0g
- カルシウム 0g
- カリウム 0g
0kcal/100g
ミネラル分がまったく含まれていない海洋深層水を原材料としており、『RO膜』という水以外の不純物を一切通さない膜でろ過された純水。
尿のミネラル度が高くなることで発症する尿路結石などのリスクを回避できる水として、安心度が非常に高い商品ですね。
尿のトラブルを経験していたり、シニアの猫ちゃんに特におすすめです。
浄水器は必要?
浄水器を使うことでニオイ物質やトリハロメタンなどの物質、サビや濁り、雑菌などが除去されるため、より安全でおいしい水が飲めます。
浄水器は性能によって除去する物質に違いがあり、中にはミネラル成分まで取り除いてくれるものも!
”何を取り除けるのか”が選ぶのに重要なポイントですが、猫の飲み水として使うならば、ミネラルもしっかり取り除ける機能があるものを選びましょう。
ペットのために開発された水道水を軟水化できる浄水器です。
ミネラル分が軽減できるため尿路疾患などの病気の予防や治療中の子にも安心ですし、人間が飲んでも問題ありません。
浄水器の中には、特定のミネラルを添加するタイプの製品もありますが、逆にミネラルによる尿路結石のリスクが高まりますので使用しないでくださいね!
浄水器を通した水は塩素が取り除かれてしまうため、雑菌が繁殖しやすくなります。
置き水をする場合は、長時間放置せずこまめに取り換えてあげるようにしましょう。
もし、水道水のニオイを嫌う猫ちゃんならば、浄水器を通した水をあげるとちゃんと飲んでくれるようになるかもしれません。
ただ、猫は趣向性が強い動物なので、すべての猫が浄水器の水を好むわけではなく、蛇口から直接水道水を飲んだり、ぬるま湯や氷水が好きなど、好みが分かれることも。
ねお
【結論】猫の飲み水は水道水・浄水器・ペットボトルどれがいい?
結局、猫の飲み水として何を使うのが一番良いのか、それぞれのメリットやデメリットを見てみましょう。
水道水
- ランニングコストが圧倒的に安い
- 塩素消毒処理されており置き水をしても雑菌が繁殖しにくく腐りにくい
- (安全な基準といえども)塩素やトリハロメタンが含まれている
- 状況によっては水道水の使用が適さない場合もある
ミネラルウォーター(人間用)
- 殺菌や除菌処理がされている
- 軟水のミネラルウォーターなら使用可
- 硬水のミネラルウォーターは健康を損ねるのでNG
- 飼い主が水の成分をしっかり把握しておく必要あり
- 雑菌繁殖防止のためこまめに水を取り替えなければならない
- ランニングコストが高い
ペットウォーター(猫用)
- ミネラル分が極めて低く猫の健康を考えて作られた水
- 猫の飲み水として最も安心できる
- 雑菌繁殖防止のためこまめに水を取り替えなければならない
- ランニングコストが高い
浄水器
- 水道水の塩素やトリハロメタン、サビや濁り、雑菌が除去される
- 水道水のにおいが除去されるため、美味しく飲める
- ミネラル成分も取り除く機能がある浄水器がある(猫の健康度UP)
- 特定のミネラルを添加するタイプの製品はNG
- 塩素除去により雑菌が繁殖しやすくなるため、こまめに取り替えが必要
- 初期導入コストとフィルター交換のランニングコストあり
以上を踏まえて、
- 猫の健康にとって良い水か
- 水を使う上でかかるコスト
- 水の取り替え頻度や掃除等にかかる手間
という3つの指標から、それぞれ採点してみました。
水道水 | ミネラル ウォーター (人間用) | ペット ウォーター (猫用) | 浄水器 | |
---|---|---|---|---|
1. 猫の健康 | △ | ☓ | ◎ | ○ |
2. コスト | ◎ | △ | △ | ○ |
3. 手間 | ○ | △ | △ | △ |
総合評価 | ○ | ☓ | ○ | ◎ |
◎:特に良い ○:良い △:場合によっては悪い ☓:悪い |
猫の健康を第一に考えるなら、徹底的にミネラル成分を除去された猫用ペットウォーターを選ぶのがベストですが、尿路疾患にかかっている、あるいは、経験したことがある猫ちゃんでなければ、コスト面も考慮して『浄水器』を選ぶのが最も良いでしょう。
ただ前述のとおり、浄水器の水は塩素も除去されてしまい、長時間ほっとくと雑菌が繁殖してしまいますので、こまめな取り替えが必要になることは避けられません。
どうしても、『塩素とミネラルを徹底除去した水をあげたいけど、外出が多くてそこまでこまめに取り替えできない!』という場合は、ちょっと荒技ですが『浄水器×自動給水器』のW利用をおすすめします。
水道水の浄化に抗菌作用がある『抗菌活性炭フィルター』を使用した自動給水器でしたら、雑菌の繁殖を押さえながらもキレイな水を維持することができます。
こちらの自動給水器はミネラル除去ができないので、水道水ではなく浄水器でミネラルをろ過した水を使えば、『塩素除去』『ミネラル除去』『雑菌繁殖防止』の3つのメリットが揃った状態にすることができるのでより安心ですね。
ただし、自動給水器だからといって水を長時間取り替えないのはおすすめしません。
自動給水器は置き水よりも、少し長くキレイな状態を保ってくれますが、基本的に1日1回の水交換は必要です。
さらに、自動給水器本体のこまめな掃除やフィルターの交換も必要で、これを怠るとカビの発生や虫が湧くこともあるので注意してください。
さいごに
キレイで新鮮な水を飲んでもらうことが、猫の体を健康にしてくれます。
水はこまめに取り換えてあげて、おいしい水とご飯で毎日喜んでもらえたら飼い主さんもうれしいですよね^^
飲み水に対してこだわりを持っている猫もいるので、「おいしい!」と思って飲んでくれる水を選んであげたいもの。
水道水や浄水器の水、ミネラルウォーターなど、それぞれの水で注意すべき点をふまえて、災害などの緊急時に備えて猫が飲んでも大丈夫な水を用意しておくことも必要です。