あなたは、「ミヌエット」という猫の品種をご存知ですか?
最大の特徴ともいえる短足、ペルシャを彷彿とさせるゴージャスな被毛と、零れ落ちんばかりの大きな目がチャームポイントのミヌエット。
日本では希少とされているため、なかなか見かけることは少ないかもしれませんが、なんとも愛くるしい外見から人気が急上昇している猫の品種です。
しかしながら、その珍しさゆえに、アメリカンショートヘアやスコティッシュフォールドなどメジャーな猫の品種と比べると、まだまだマイナーなミヌエットですので、「飼ってみたい!」と思っても情報が少ないんですよね。
そこで、この記事では、ミヌエット(ナポレオン)とはどういった猫なのかをはじめ、大きさ・寿命・性格などの特徴から飼い方まで、詳しくご紹介します。
元・猫カフェ店員でもある筆者が、短足猫とも触れ合ってきた経験をもとに、ミヌエットの魅力を徹底的に解説しますよ!
もくじ
ミヌエットとはどんな猫?
じわじわと世の中に浸透しつつあるミヌエットですが、ルーツや歴史など、まだまだ知らないことも多いのではないでしょうか。
ここでは、ミヌエットがどんな猫なのかを解説します。
ミヌエットの歴史
ミヌエットは、アメリカのジョセフ・スミスという人物の手によって、1996年に作出された猫の品種です。
本来、犬(バセット・ハウンド)のブリーダーであったジョセフは、繁殖の傍らドッグショーの審査員などの活動をしていましたが、ある日、新聞「ウォール・ストリート・ジャーナル」に掲載されていたマンチカンの記事に目が留まります。
自らが繁殖しているバセット・ハウンドも短足の犬種ということで、短足の猫種であるマンチカンに興味を持ち、マンチカンには短足タイプと長足タイプがあることを知りますが、長足のマンチカンは需要を得られず、保護センターに収容されているという悲しい事実に胸を痛めるジョセフ。
そこで、長足だからといって軽んじられている命を救うため、育種の過程で短足を固定化できないものかと考えたジョセフは、マンチカンとペルシャの交配を試み、更にその子猫をエキゾチックショートヘアやヒマラヤンなどと交配させることよって、ミヌエットを生み出すことに成功しました。
ミヌエットの繁殖からは引退したジョセフですが、ミヌエットの魅力に感銘を受けた多くのブリーダーによって、ミヌエットの繁殖は今なお世界中で続けられています。
1996年に育種をスタートしたミヌエットは、2001年に世界最大の規模である血統登録機関のTICA(The International Cat Association)に、新しい猫の品種として公認されました。
かつてはナポレオンと呼ばれていた
世界中の愛猫家から愛されているミヌエットですが、2015年までは「ナポレオン」という名称で呼ばれていました。
ミヌエットの特徴でもある短足のフォルムが、低身長のイメージが強いフランスの皇帝「ナポレオン・ボナパルト」を連想させることから、名付けられることとなったといわれています。
しかしながら、かの有名な皇帝ナポレオンの固有名詞を使用するにあたっての抗議が寄せられたため、現在の名称である「ミヌエット(Minuet)」に変更されました。
「ミヌエット」という言葉には、「優雅な舞踏」という意味がありますよ。エレガントなミヌエットのイメージにぴったりですね!
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ミヌエットの特徴
猫の品種としてはまだ歴史が浅いといえるミヌエットには、どんな特徴があるのでしょうか?
ここでは、ミヌエットの特徴を詳しく解説します。
身体的な特徴
体型
ミヌエットのボディは、セミコビータイプにカテゴライズされているため、全体的に丸みを帯びながらもずっしりとしたフォルムをしています。
筋肉の発達を感じる短い四肢が特徴で、四肢の先端は丸く、長毛タイプのミヌエットには飾り毛も見られるでしょう。
数ある猫の品種のなかでも太く、短い首をしているところもミヌエットのポイントとなっており、背中はまっすぐなラインを描いています。
頭部
ミヌエットの頭部は丸く、かつ幅が広いので、どの角度から見ても丸みを感じられるでしょう。
幅の広い頭部が頬にかけてつながっているため、フェイスラインも丸っこく、風船のようにふっくらと膨らんでいるところが特徴ですね。
また、マズルは程よい短さで、ひげが生えているウィスカーパッド(ひげ袋)にかけて広くなっています。
目
ミヌエットの目は、ぱっちりと見開いたような大きさと丸みがありますが、飛び出してはいないところが特徴といえるでしょう。
そして、猫の品種のなかには、決められたカラーしか現れないこともある目色についても、ミヌエットの目には全てのカラーが現れることが分かっています。
- ブルー
- アクア
- サファイアブルー
- グリーン
- ヘーゼル
- イエロー
- カッパー
- ゴールド
目色の種類は、ブルー系・グリーン系・ブラウン系・ゴールド系とバリエーション豊かで、なかには左右でカラーが違うオッドアイのミヌエットが見られることも。
目の位置はやや離れているため、タレ目でキュートな印象を与えますね。
耳
ミヌエットの耳は、中間からやや小さめのサイズで、耳の先端が丸くなっています。
耳の位置は離れ気味となっており、付け根が広がっているところが特徴で、顔の大きさのわりには小さな耳がなんとも可愛らしいですね。
鼻
ミヌエットの鼻は、ペルシャ系統の猫を交配させて作出していることから、ペルシャ特有の低い鼻を持ち合わせていますが、ペルシャよりも鼻が高いところが特徴でしょう。
異なる純血種の猫を交配させている、いわゆる「ハイブリッド種」であるミヌエットは、鼻の低い猫に発症しやすいとされている呼吸器疾患を防ぐため、ペルシャほど鼻を低くし過ぎないことが繁殖の条件にもなっていますよ。
ちなみに、額から鼻にかけてくぼみがあるのも、呼吸器疾患を避けることにつながっています。
3種類の足の長さ
- 短足タイプ(スタンダード)
- 中足タイプ(スーパーショート)
- 長足タイプ(ラグハガー)
ミヌエットの足の長さは、短足タイプ(スタンダード)・中足タイプ(スーパーショート)・長足タイプ(ラグハガー)の3種類に分けられます。
足の短さが特徴ということもあり、短足タイプが最もポピュラーかと思いきや、全てのミヌエットが短足に生まれるわけではありません。
ミヌエットのなかには、中足タイプや長足タイプも存在し、意外にも短足のミヌエットが生まれる割合は少ないものとなっています。
したがって、短足タイプのミヌエットは人気があり、購入時の価格も高価となりやすいでしょう。
価格の相場は、足の長さの種類で変動することがあり、短足タイプのミヌエットが約30~60万円前後、中足・長足タイプのミヌエットで約10~20万円前後です。
被毛の種類
- 長毛タイプ(ロングヘア)
- 短毛タイプ(ショートへア)
ミヌエットの被毛は、毛が密集しているアンダーコートとオーバーコートから構成されたダブルコートで、長毛タイプ(ロングヘア)と短毛タイプ(ショートへア)の2種類があります。
長毛タイプは、ひとつの毛穴から無数の毛が生えているため、非常にボリューミーで、たっぷりとした被毛が華やかな印象を与えるでしょう。
マンチカンとエキゾチックショートへアなど短毛の猫との交配では、短毛タイプも生まれることがありますが、短毛とはいえどもやはり長め。
また、長毛タイプのミヌエットの尾は、ボディの大きさに対して長めのサイズとなっているので、ふさふさでゴージャスですよ。
毛色の種類
- ブラック
- ブラウン
- チョコレート
- ホワイト
- クリーム
- シナモン
- フォーン
- レッド
- ブルー
- ライラック
- キャリコ
ミヌエットには、ペルシャをはじめとする様々な猫の遺伝子が混ざっているため、毛色にもありとあらゆるカラーが見られます。
毛色の種類は、ブラック系・ブラウン系・ホワイト系・クリーム系・レッド系・ブルー系・シルバー系など、実にバリエーションが豊富だといえますね。
また、3色のカラーが織り交ざったキャリコ(三毛猫)なるカラーも存在し、カラーの現れ方には個体差があるため、表情の違いが楽しめるでしょう。
ミヌエットの大きさ
ミヌエットといえば、長毛でふわふわとしたイメージですが、実際にはどれくらいの大きさなのでしょうか?
ここでは、ミヌエットの大きさについて詳しく解説します。
ミヌエットの体長
- 約30~40cm
ミヌエットの体長は、成猫で約30~40cm前後です。
小型に分類される猫の品種ということもあって、一般的な猫の品種と比べると一回りほど小さいといえるでしょう。
ちなみに、一般的な成猫の体長は約45cm前後となっていますが、ミヌエットはふんわりとした柔らかい毛質と筋肉質なボディを兼ね備えているため、それよりも大きく見えますよ。
ミヌエットの体重
- 生後1ヶ月ごろ:約500g
- 生後3ヶ月ごろ:約1~1.5kg
- オス:約3~4kg
- メス:約2.2~3.4kg
ミヌエットの体重は、成猫の場合、オスがメスよりもやや大きく、メスがオスよりもやや小さい傾向にあります。
子猫の場合も、小型に分類される猫の品種ということを踏まえて、一般的に挙げられている体重よりも小さめに推移すると考えましょう。
成猫へと成長しきっても小柄ではありますが、筋肉質でがっしりとしているため、抱き上げるとどっしりとした重みを感じられますよ。
ミヌエットの寿命
新しく、かつ希少な猫の品種だからこそ、ミヌエットは何歳まで生きるのかが気になるところ。
ここでは、ミヌエットの寿命について解説します。
平均寿命は12~14歳
ミヌエットの平均寿命は、12~14歳となります。
平均的な猫の寿命が15歳ですので、少し短いような気がしないでもありませんが、それほど大差はないと考えて良いでしょう。
比較的、まだ新しい猫の品種であるということや、家庭で飼育されているミヌエットの数が少ないということからも、ミヌエットの最高齢の記録などは見つかっていません。
ミヌエットだけに限りませんが、環境や食生活なども寿命に変化をもたらしますので、日頃から愛猫の健康管理を怠らないことが大切ですね。
ミヌエットの性格
レアだといわれているミヌエットの性格が、どんなものなのか知りたくありませんか?
ここでは、ミヌエットの性格について解説しましょう。
温厚な性格
ミヌエットは、とても穏やかで優しい性格をしているため、小さな子どもや種族の異なる動物とも仲良くできるでしょう。
基本的に警戒心が少なく、人見知りをするタイプではないので、来客の多い家庭でもストレスを感じることなく過ごせるといえます。
猫の多頭飼いにも向いている猫の品種で、先住猫がいたり、新しく猫を迎えるといった場合でも、すぐに距離を縮めることができますよ。
利口な性格
愛情深く、飼い主に対しても忠誠心の厚い性格をしており、とても賢いミヌエット。
しつけがしやすく、クリッカーという音の鳴る道具を用いれば、「クリッカートレーニング」なる本格的なトレーニングを行うこともできちゃうんです。
従順で、飼い主から教えられたことを素早く吸収するため、これまで猫を飼ったことがなくても飼いやすい猫の品種ですよ。
マンチカンとペルシャのような性格
ミヌエットは、マンチカンとペルシャ系統の猫とのハーフであるため、マンチカンの好奇心が旺盛な性格とペルシャの人懐っこい性格を受け継いでいます。
活発で、とにかく遊ぶことが大好きなので、子猫のあいだからよく遊びながらコミュニケーションをとっておくと、飼い主との信頼関係をより強く築くことができるでしょう。
短足でありながら、全力疾走をしたり、高いところへも軽々とジャンプしてみたりとアクティブで、猫同士でじゃれ合うことも大好きです。
また、その活発さとは反対に鳴き声は静かなもので、無駄に鳴くこともしないため、マンションなどの集合住宅で飼うのにも適していますね。
ミヌエットがかかりやすい病気
憧れのミヌエットと暮らすことになったら、気をつけたい病気の種類も把握しておくと安心。
ここでは、ミヌエットがかかりやすい病気について解説します。
流涙症
ミヌエットは、ペルシャ系統の猫の血が入っているため、ペルシャ系統の猫に多く発症するとされる流涙症に気をつけましょう。
流涙症とは、常に涙が溢れ続ける病気で、涙で濡れた被毛が「涙やけ」を引き起こし、目頭から鼻筋にかけて茶褐色に変色してしまうこともあります。
命に関わる病気ではありませんが、涙が流れる目元に不快を感じ、前足で触ろうとすることによって、結膜炎などの病気を併発することも。
また、涙の色が赤茶色であることから、特にホワイト系の毛色のミヌエットだと目立ちやすくなりますので、目の周りを優しく拭うなどのお手入れが必要です。
肥大型心筋症
ハイブリッド種であるミヌエットは、病気を発症しないような配慮をしたうえで作出されていますが、稀に遺伝性疾患を抱えていることがあり、なかでも多いとされる肥大型心筋症に気をつけましょう。
肥大型心筋症とは、主に遺伝性と老化が原因で、心臓の筋肉「心筋」が厚くなることによって、心臓の機能が低下してしまい、死に至る可能性もある病気です。
初期の段階では無症状であることがほとんどで、心臓に雑音が混ざる程度ですが、症状が悪化するにつれて元気や食欲が失われ、咳をしたり、呼吸困難になることも。
健康診断で心臓の雑音に気づくといったケースが多く、完治させるのは難しいですが、薬で病気の進行を遅らせたり、症状を緩和することは可能です。
「最近、運動もしていないのに息苦しそう・・・」など、いつもの様子に違いが見られたら、早めに動物病院で相談しましょう。
肥大型心筋症の発症リスクが高いかどうかは、遺伝子検査を行うことで調べられます。
慢性腎臓病
ミヌエットをはじめ、一般的に多くの猫が発症しやすい病気として、気をつけたいのが慢性腎臓病。
慢性腎臓病とは、老化が原因といわれており、その名が意味するとおり腎臓の機能が徐々に低下していく病気で、長い年月をかけながらゆっくりと進行していきます。
初期の段階では無症状ですが、腎臓の機能が低下することによって、体内の水分バランスが崩れ、大量の尿をしたり、飲料水を飲む回数が増えることに。
そうなると、脱水症状を引き起こしますし、本来ならスムーズに排泄されるであろう毒素が溜まってしまうので、嘔吐を繰り返したり、口内からアンモニア臭も漂います。
悪化した腎臓を元に戻すことはできませんが、日頃から動物病院で健康診断を受けておくことで、病気の早期発見につながり、進行を遅らせる治療も受けられますよ。
ミヌエットの飼い方の注意点
ミヌエットが快適に暮らすためには、どんなポイントを押さえておくべきなのでしょうか?
ここでは、ミヌエットの飼い方の注意点について解説したいと思います。
環境面
活発で、遊ぶことが大好きなミヌエットには、室内でもしっかりと運動することのできる環境を準備するのがポイント。
短足ではあるものの、他の猫の品種にも負けず劣らずパワフルに動き回るので、上下運動が楽しめるキャットタワーなどを設置するのがおすすめです。
飼い主をはじめ、人間とのスキンシップを好む性格をしているため、構うことをせずに放っておくとストレスを感じてしまいますので、要注意。
成猫になると行動も落ち着いてきますが、子猫のあいだは、たくさんのおもちゃで一緒に遊んであげてくださいね。
食事面
ミヌエットは、生まれつきの短足から腰に負担がかかり、肥満になりやすい傾向があるため、肥満にならないような配慮をするのがポイントです。
肥満にアプローチするような良質なフードを選ぶのがおすすめで、カロリーオーバーすることのないように適切な分量を守り、適正体重をキープしましょう。
肥満は様々な病気を引き起こすきっかけにもなりますので、日頃からきちんと食事の管理をしておくことが大切ですよ。
定期的にブラッシングなどのケアも
ペルシャ譲りの柔らかい毛質をしているミヌエットですので、毛玉を防ぐためにも定期的なブラッシングを欠かさないことがポイント。
長毛タイプのミヌエットの場合、ブラッシングは日課にしたいところですが、嫌がるようならササッと短時間で終わらせ、複数回に分けてブラッシングするのがコツです。
少なくとも週に2~3回のブラッシングを行って、美しい被毛を維持してくださいね!
皮脂でコーティングされている被毛は、汚れが溜まると雑菌が繁殖しやすくなってしまいます。そうなると、皮膚炎などを発症する可能性も高くなりますので、月に1回はシャンプーを行うのが理想的ですよ。
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まとめ
ミヌエット(ナポレオン)とはどういった猫なのかをはじめ、大きさ・寿命・性格などの特徴から飼い方までお伝えしましたが、いかがでしたか?
「長足を理由に捨てられることがあってはならない」と、マンチカンの短足を固定化することから、ミヌエットは誕生しました。
希少な猫の品種という部分にスポットを当てるだけではなく、キュートな外見やフレンドリーな性格も含めて、丸ごと愛らしいミヌエット。
たとえ長足だとしても、ミヌエットの愛らしさは揺るぎのないものですよね。
ぜひ、新たな家族の一員として、ミヌエットを迎えてみませんか?