近年、猫の寿命は延び続けており、平均寿命は約15歳とのデータが発表されています。
かつて、猫の平均寿命は約10歳でしたが、猫の室内飼いが主流となり、食事や健康に配慮する愛猫家が増えたことが、猫の長寿化につながっているといえますね。
しかしながら、猫も人間と同様に、加齢とともに足腰の筋力が衰えていくことから、若いころには必要のなかったトイレのサポートをしなくてはならない場合も。
- トイレに失敗してしまう・・・
- トイレの回数が増えた
- トイレの回数が減った
上記のように、今まではスムーズに排泄できていたのに失敗したり、トイレの回数が増減したりと、以前とは違う様子に戸惑うこともあるのではないでしょうか。
そこで、この記事では、老猫のトイレの適切な回数や量をはじめ、トイレからはみ出す失敗の原因と対策法を詳しくご紹介します。
13歳を迎えた愛猫のチビ(黒猫・♂)と暮らす筆者が、歴代の愛猫たちとの体験談も交えつつ、老猫のトイレ事情を徹底的に解説しますよ!
もくじ
猫が高齢になったらトイレ事情がどう変わる?
愛猫が年齢を重ね、老猫に近づくにつれて、トイレの仕方にも変化が見られることがあります。
ここでは、猫が高齢になるとトイレ事情にどのような変化がみられるのかを解説します。
トイレの回数・量が増えた
おしっこの場合
猫は高齢になると、慢性腎不全や糖尿病を発症する確率が高まり、それらの病気によって内臓の機能が低下し、排尿の回数や量が増えることがあります。
内臓の機能が低下することで、体内で十分に吸収できなかった水分がそのまま尿として排出される(=脱水症)に陥るため、これまで以上に飲料水を飲むようになり、排尿の回数・量も増えてしまうんですね。
猫がゴクゴクと飲料水を飲んでいる姿に、「たっぷり水を飲んでいる」と勘違いしてしまいがちですが、病気が潜んでいる可能性もあるため、注意が必要です。
うんちの場合
基礎代謝が低下しがちな老猫は、肥満になりやすい傾向があります。
したがって、肥満対策としてダイエットフードに切り替えた際は、排便の回数や量が増える場合もあります。
猫も人間と同じように、加齢とともに基礎代謝が低下しますが、肥満にアプローチするフードの成分には食物繊維が豊富に含まれているので、これの影響により排便の回数・量が増えるといえるでしょう。
また、消化器の機能の低下によって、下痢をする老猫も少なくありませんが、排便の頻度が高くなったうえに軟便や下痢といった状態が続くようなら、早めに動物病院を受診して。
特に体力のない老猫の下痢は重症化しやすく、脱水症に陥る危険性も高いですし、甲状腺機能亢進症を発症している可能性もあるので、「ただの下痢」で済まさないようにしてください。
高齢猫に多いホルモンの病気。
甲状腺の働きのコントロールができなくなり、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることによって、身体の様々な臓器に負担をかけてしまう。
トイレの回数・量が減った
おしっこの場合
10歳以上の老猫は、腎不全を発症する確率が極めて高く、特に慢性腎不全の影響で排尿の回数や量が減ることもあります。
慢性腎不全は、初期の症状(飲料水を大量に飲む・尿量が増える)が進行していき、尿毒症(食欲が落ちる・嘔吐をする)になると、末期には腎臓で尿を作れなくなってしまうため、排尿の回数・量が減るんですね。
慢性腎不全は完治することのない病気ではありますが、「いつもより尿の量が多い」という早期の段階で病気を発見できれば、食事療法などで症状の進行を遅らせる治療が受けられます。
愛猫が高齢に差しかかるころには、定期的な健康診断を受けるのがおすすめですよ。
サン(黒猫・♂)という猫は、15歳のころに慢性腎不全を発症させてしまいましたが、初期の段階だったので、すぐに薬物治療を開始。
フードに混ぜながら薬を投与し続けたおかげで、3年も寿命が延びました。
そして、苦しむこともなく、安らかな最期を迎えられましたよ。
愛猫の穏やかな老後のためにも、早めに病気を発見することが大切ですね。
yuki
うんちの場合
老猫になれば、だんだんと腸の機能も低下していき、若いころよりも腸の動きが悪くなるため、便秘になってしまうことも多いでしょう。
3日以上の便秘が続くようなら、豊富に配合された食物繊維や繊維質で便通をサポートするタイプのフードを選んでみたり、水分含水量の高いウェットタイプのフードで腸に刺激を与えてみるのがおすすめ。
しかしながら、老猫の便秘は重症化する危険性もあり、甲状腺機能低下症などを発症している可能性もありますので、便秘が改善されなかったり、様子がおかしいと思ったら獣医師に相談しましょう。
排便のポーズをしているのに、スムーズに排便できないのは便秘かも。
オリゴ糖などが配合された猫用の乳酸菌サプリも販売されていますので、取り入れてみるのもいいですね!
yuki
トイレの時間が長くなる
老猫になり、子猫や成猫よりも圧倒的に日々の活動量が減ることによって、徐々に腸の働きも弱まってしまいますので、排便にも時間がかかるようになります。
運動不足が筋力を低下させることで、排便時に力むのも難しくなりますし、便秘気味になる老猫も多いですが、優しくお腹を撫でてマッサージすると排便を促す効果がありますよ。
腸は、ひらがなの「の」に似た形状をしています。
手の平で猫のお腹に「の」の字を描くようなイメージで、マッサージしてあげましょう。
高齢猫のトイレの健康的な回数や量は?
排尿の量が増え過ぎたり、排便の回数が減り過ぎたりすると、何らかの病気を疑って不安になることもありますよね。
高齢になった猫のトイレは、どの程度の回数や量だと健康的かつ理想的といえるのでしょうか?
ここでは、高齢猫の健康的なトイレの回数や量を解説しますよ。
健康的な排尿の回数・量
おしっこの回数
一般的に、健康な老猫の排尿の回数は、1日に2~3回前後といわれています。
老猫になると、どうしても腎臓の機能や筋力が低下してしまうため、平均的な排尿の回数よりも増えることがありますが、1日に5回以上もトイレへ行くようなら、ちょっと多過ぎかも。
また、猫の体質や食事の内容によっても個体差が生じ、平均的な排尿の回数とは異なるケースもありますので、日頃から愛猫の正常なトイレの回数を把握しておくことが大切です。
おしっこの量
健康的な老猫の1日の排尿の量は、体重1kgあたり50mlが適切とされています。
愛猫の適切な尿量を知りたいと思ったら、下記の方法で簡単に計算できますよ。
- 体重1kgを50mlに換算する
- 50mlを猫の体重の分だけ掛けて計算する
例えば、体重5kgの猫の場合、50ml×5=250mlまでの尿量が1日の上限となり、それ以上の量は多尿と判断できます。
ただ、愛猫の排尿時に、毎回もれなく採尿するのは至難の業ですよね^^;
なので、トイレの猫砂の固まりから、おおよその排尿量を見積もる方法をご紹介しましょう。
こちらをご覧ください。
こちらは、尿の代わりに100mlの水を注いだグラスと、100mlの水を吸収させた猫砂の固まりです。
100mlの水を吸収させた猫砂(鉱物製)を、トイレの真上から撮影したものはこちら。
体重5kgの猫が1日に2回の排尿をするとして、このような大きさの猫砂の固まりが2つできるなら、1日の尿量は200ml程度だということが分かりますね。
毎回の尿量は必ずしも決まっているわけではありませんが、愛猫の排尿時にできる猫砂の固まりの大きさを覚えておくことで、異変が起こっても早く気づけますよ。
多尿が見られると、老猫が患いやすいといわれている腎臓に関する病気を発症している可能性がありますので、愛猫の排尿の量は常に把握しておきましょう。
健康的な排便の回数・量
うんちの回数
健康とされる老猫の排便の回数は、一般的に1日に1回~2回程度です。
猫の体質をはじめ、食事の内容などで排便の回数にも個体差が生じますので、仮に1日おきの排便であっても定期的に排便をしており、かつ元気な様子なら健康と判断できるでしょう。
異変を見抜くポイントとしては、やはり健康な状態の愛猫の排便ペースを把握しておくことといえ、何日ものあいだ排便していなかったり、排便時に痛がる、苦しんだりするようなら、動物病院を受診する必要があります。
うんちの量
健康的な老猫の1回の排便の量は、体重4~5kgあたり人間の人差し指の1~3本分程度といわれています。
艶のある茶色か黒に近い茶色で、硬過ぎることもなく、かつ柔らか過ぎることもなく、あまり猫砂がつかない状態のものが正常なうんちですね。
食物繊維が豊富に配合されているフードを与えると便の量が増えることがあり、特に長毛種の猫は、食物繊維を摂取すると便と一緒に毛玉が排出される傾向があるため、便にもボリュームが感じられるかもしれません。
猫のうんちは健康のバロメーターにもなりますので、毎日のトイレ記録をつけてみるのがおすすめですよ。
老猫がトイレを失敗する原因と対策方法
若いころは何でも容易にできていたとしても、年老いると何でも困難になるものですよね。
猫も例外ではなく、なかでも排泄に関する問題は多いとされ、トイレを失敗してしまう老猫もいることでしょう。
ここでは、老猫がトイレを失敗する原因と対策方法を詳しく解説します。
トイレからはみ出して排泄する場合
考えられる原因
老猫がトイレからはみ出して排泄する原因に、加齢による足腰の筋力の低下が考えられます。
足腰の筋力が衰えると、高さのあるトイレ容器のフチを越えることすら難しくなるため、トイレの外側にはみ出して排泄してしまうケースがあるんですね。
また、老猫の視力が低下している状態でも、トイレからはみ出したり、トイレの場所が分からなくなってしまうといったことがあります。
猫は視力のみならず、聴覚や嗅覚、触覚を活用しながら生活する動物ですから、視力が低下していても日常生活にはさほど支障がなく、様子の変化に気づきにくいかもしれません。
トイレの失敗が続いたら、まずは何が原因なのかをよく観察して、老猫がスムーズに排泄できるようにサポートしてあげましょう。
対策方法
高さのある場所にトイレを設置していたり、フチの高いトイレ容器を使用している場合、段差のないフラットなスペースに設置するか、フチの低いトイレ容器に変えましょう。
脚力の低下しがちな老猫が、トイレへ出入りするのをサポートしてくれるトイレ用スロープも販売されており、これをトイレ容器にセットして使用するのもおすすめ。
それでも、どうしてもトイレの外側にはみ出して排泄してしまう場合は、日頃からトイレの周囲にペットシーツを敷くことで対策してみるのもいいですね。
万が一、トイレからはみ出して失敗することがあっても、汚れたペットシーツを交換するだけで済みますので、飼い主の負担を減らせますよ。
トイレ以外の場所で排泄する場合
考えられる原因
老猫がトイレ以外の場所で排泄してしまう原因として、内臓の機能の低下とともに排泄の回数が増え、トイレに間に合っていないことが考えられるでしょう。
トイレ以外の場所で排泄していると、どうしても「粗相をした」と捉えてしまいがちですが、トイレが綺麗で清潔な状態なのに失敗しているとしたら、トイレに間に合っていない可能性が非常に高いです。
ちなみに、排泄の回数が増える老猫の場合、トイレが汚れるペースも早くなるものですので、猫が汚れたトイレを使用するのにストレスを感じれば、実際に粗相につながってしまうこともあり得ますよ。
対策方法
トイレまでの距離が長いと、間に合わずに途中で排泄してしまうことがありますので、トイレを設置する場所を見直してみましょう。
自由に部屋と部屋を行き来できる老猫の場合、トイレの数を増やし、各部屋に設置するのも対策になります。
トイレまでの道のりにドアなどの障害物があったり、トイレを「インテリアの邪魔になるから」とトイレカバーやカーテンなどで目隠ししていることもあるでしょう。
しかしながら、トイレに間に合わなくなった老猫に配慮することを最優先とし、スムーズに行けるスペースにトイレを設置してあげるのがポイントですよ。
18歳まで生きたサン(黒猫・♂)は、亡くなる直前、たった一度だけトイレに間に合わなかったことがあります。
忙しさにかまけてトイレ掃除をおざなりにしてしまっても、猫砂のストックを切らせて新聞紙を代用しても、決して文句を言わなかったサンがはじめて粗相した・・・驚きましたが、すぐに「間に合わなかったんだ」ということに気づきました。
トイレに失敗してショックを受けているのは猫も同じ。
粗相だと勘違いしたり、叱ってしまいたくなる気持ちもあるかと思いますが、グッとこらえ、年老いた愛猫を労わってあげることが大切ですね。
yuki
高齢猫用のおすすめトイレ
年老いた愛猫にとってみると、これまでのトイレでは使用しづらくなっているかもしれません。
愛猫がストレスフリーなトイレライフを送るためにも、体の変化に対応したトイレを準備してあげたいところですね。
ここでは、高齢猫におすすめのトイレを5つご紹介しますよ!
高齢猫におすすめのトイレはコレ!
SAVIC Junior toilet
【SAVIC Junior toilet】は、世界73カ国に展開されている、ベルギーの人気ペット用品メーカーが製造するオープンタイプのトイレです。
トイレの出入り口が低く設計されているため、関節炎になっていたり、脚力の衰えた老猫にも非常に優しく、トイレへの出入りが簡単に行えるところが最大の特徴。
猫砂の種類も選びませんし、北欧らしいシンプルでスタイリッシュなデザインなので、インテリアのアクセントにもなりそうですね。
なかなか他ではお見かけしないカラー、ニュアンスのあるブルーストーンが素敵です。
SHARP ペットケアモニター
【SHARP ペットケアモニター】は、猫の体調を管理する機能が搭載されたシステムタイプのトイレです。
トイレの底部に設置されたスケールユニットが猫の体重・尿量を計測し、尿回数・トイレの滞在時間・設置場所周辺の温度をセンサーが細かくチェック。
それらの計測データを組み合わせることで、「滞在時間が長いわりに排尿していない」などといった変化の傾向まで把握できる仕組みとなっています。
体調に変化があれば、自動的に記録された健康データをスマートフォンにお知らせしてくれますし(専用アプリが必要)、何といっても日々の排尿で健康チェックができるところが大きな特徴といえ、健康管理を日課にしたい老猫にはぴったりのトイレですね!
Richell ラプレ 壁高 ネコトイレ
【Richell ラプレ 壁高 ネコトイレ】は、トイレの出入り口が低く設計されているオープンタイプのトイレです。
猫砂が飛び散らないようにトイレの壁は高く設計されていますが、出入り口は低くなっているため、老猫や子猫でも楽に出入りできるところが特徴。
トイレの周囲を囲いながらもフード(屋根)がついていないデザインなので、老猫の健康管理には欠かせない排泄物のチェックや排泄中の様子を観察するのにも適しています。
また、肉球についた猫砂を簡単に払い落とせるメッシュステップが内蔵されていたり、本体がプラスチック製でお手入れしやすいのも◎ですね。
カラーのラインナップは、コーラルピンク・ホワイト・ダークグレーの3色。
シックで上品なカラーが、インテリアにもしっくりと馴染むのではないでしょうか。
LION 獣医師開発 猫トイレ
【LION 獣医師開発 猫トイレ】は、全ての猫と飼い主に向けて、獣医師が開発したオープンタイプのトイレです。
足腰の筋力が衰えることから、トイレ容器のフチを越えるのも一苦労である老猫にとって、トイレの出入り口を約12cmまで低く設定しているところが大きな特徴。
いつ排泄したかがよく分かるオープンタイプのデザインで、固まった猫砂の大きさから健康チェックができる、目盛りのついたスコップが付属されているというのも嬉しいですね。
獣医師ならではの目線でしっかりとポイントをおさえたトイレは、まさに老猫と飼い主の理想的なトイレとして、活躍すること間違いなしでしょう。
花王 ニャンとも清潔トイレ ドームタイプ
【花王 ニャンとも清潔トイレ ドームタイプ】は、トイレの出入り口を低く設計しつつ、気になる匂いもシャットアウトしてくれるドームタイプのトイレです。
フード(屋根)のついているドームタイプのトイレではあるものの、出入り口と内部空間が広いため、排泄中の様子を観察するのはもちろん、排泄物のチェックもしやすいところが特徴。
また、内部空間をゆったりと広めに持たせることで、トイレの最中に体勢を入れ替えるのもスムーズに行えるでしょう。
加齢とともに弱くなった足腰を労わってあげられるような、老猫想いのトイレですね。
まとめ
老猫のトイレの適切な回数や量をはじめ、トイレからはみ出す失敗の原因と対策法をお伝えしましたが、いかがでしたか?
走り回って、飛び跳ねて、元気いっぱいだった愛猫も、年月とともにゆっくりと年齢を重ねれば、いつかは老猫へとなっていくのは自然なことです。
「排泄」は、年齢に関係なく一生涯続いていくものですので、思うように排泄できなくなってくると、猫も飼い主ももどかしく感じてしまうかもしれません。
愛猫に一日でも長生きしてもらうためにも、排泄に関する健康チェックを習慣にし、時には猫の目線に立ちながら、快適なトイレライフをサポートしてあげてくださいね。